OEY ***モノつくり再開***

制作の過程、思った事、作品を記録します。

国立西洋美術館①写本-いとも優雅なる中世の小宇宙-

今回の展示会とは関係ないのですが、随分前、雑誌で「ベリー公のいとも豪華なる時祷書」という美しい写本を知り、興味を持ちました。

本物を見られる展示会!早速行ってきました。

 

内藤コレクション 写本 -いとも優雅なる中世の小宇宙-

国立西洋美術館(東京・上野公園) 

2024年6月11日~8月25日

 

パンフレットから****************

印刷技術がなかった中世ヨーロッパにおいて、写本は人々の信仰を支え、知の伝達を担う主要な媒体でした。

羊や子牛などの動物の皮を薄く加工して作った紙に人の手でテキストを筆写し、膨大な時間と労力をかけて制作される写本は、ときに非常に贅沢品となりました。

テキストの区切りやページの余白には、華やかな彩飾が施されることもありましたが、それらの例の中には、書物としての実用の域を超えて一中品の美術作品へと昇華を遂げているものも珍しくありません。

当館では2015年度に、筑波大学茨城県立医療大学名誉教授の内藤裕史氏より、写本リーフ(本から切り離された一枚一枚の紙葉)を中心にするコレクションを一括でご寄贈いただきました。その後も2020年にかけて、内藤氏ご友人の長沼昭夫しからもご支援を賜りつつ、新たに26点の写本リーフを所蔵品に加えています。

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本展では、内藤コレクションを中心に、国内の大学図書館のご所蔵品も若干加えた約150点より構成され、聖書や詩編集、時祷書、聖歌集など中世から近世初頭にかけて普及した写本の役割や装飾の特徴などをジャンルごとに見ていきます。

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今回はスマホを忘れずに持って行きました(分かる人には分る。笑)

照明や見学者が保護ケースやガラスに映るので、出来るだけ影響がないように角度をつけて撮影したり、写真をカットしたりしています。形が斜めになっていたり、写真の大きさが揃わず見辛いかと思います。その点はご容赦ください。

会場前のロビーで写本の文字入れや、装飾の方法の映像を流しています。画の中に金を貼る作業とか、立体的に見せる色の付け方とか、かける手間暇に呆れて驚いてから入場すると、感動が違います。

 

装飾について。上の説明の通り、写真の中から「このテクニックね」と思う物を例として付けてみました。

 

【イニシャル】

 

物語イニシャル…イニシャルの中に、絵が描いてある。内容に関係ある場合もあるが、無い場合もある(え、関係ない場合もあるの?)

 

典礼詩編集零葉

Bの上段には神(開いた書物を示しつつ祝福のポーズ)下段にはダヴィデ(伝承上の「詩編」作者。弦楽器を奏でている)

 

シャンピ・イニシャル...彩色した地に金色文字。

 

線条装飾イニシャル...文字の周囲にペンの線描を加えたもの

 

カデル・イニシャル…飾り結びや人の顔を表す戯画化した人の顔などを加えたもの。

 

【枠装飾】

イニシャルの①を参考にしてください。枠、です。

【行末装飾】

下の余白を埋めるために施す装飾。

 

【ドロルリー】

ページの余白に、人間と動物、鳥などを合成したグロテスクなモチーフを描いた。

 

【パ・ド・パージュ】

ページ下部の余白に、何か、描いてある。文章に関係ない場合もある。

(また?関係ないのもある?それってただの落書きでは?)

どれ?

これね?

 

【ミニアチュール】

写本挿絵。装飾としての挿絵ではなく、堂々とページとして割り当てられた画。

 

さて、会場は聖書→詩編集→政務日課のための写本→ミサのための写本→聖職者が用いたその他の写本→時祷書→暦→法関係の写本→世俗写本とコーナーが並んでいました。

キリスト教徒であったら、もう少し見方が違うかと思いますが、怪しい私の美術鑑賞の眼でピックアップして写真を撮り、並べています。(要は、順不同)ご容赦ください。

 

 

 

 

ズヴォレ聖書」零葉

3カラム(欄)という珍しいレイアウトは3ヴァージョンの「詩編」が併記されているもの。各カラムの中ほどには、伝承的な作者のダヴィデの生涯の場面を描いた物語イニシャルが含まれる。

 

 

祈祷書零葉

この紙葉は、既存の写本に挿入して美的価値を高めるために製作された。当時の所有者は、刺繡の縁取りを施して、小型絵画の形で礼拝に使用したらしい。

 

↑この画 ↓小さい。細かいんです。

 

時祷書零書

主題は「受胎告知」 

 

 

「こんなの作ったのよ」と友人や来客に見せる事はあるいはあったかもしれませんが、あくまでも日常で使っていたものですよね。絵画のように飾って観てもらうものではない。そこが驚きです。

そして現代、本のデジタル化が進んだら、紙の本としては、オーダー仕様とか並べて美しいとか、美術的価値がある本が増えてきたりしてね、なんて考えました。