OEY ***モノつくり再開***

制作の過程、思った事、作品を記録します。

シャツブラウスの製作と課題

前回からの続き。

シャツブラウスの製作過程と、課題についてです。

 

【製作過程】

今回のシャツブラウスは、長い期間かかっての製作になりました。

実は、ご依頼者様とデザインが途中で変わったのです。

では、順を追って…

 

🪡ブラウス製作のご依頼🪡

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このブラウスはブログが縁で仲良くさせていただいているjunoiさん(id:junoi)にお迎え頂きました。

junoiさんが着ているのを、お母様が気に入って下さり「このデザインで長袖が欲しいけど作れないか」とのお話。「前身頃に刺繍生地を使って、このデザインの長袖版」としてお受けしました。

 

もちろん作れるのですが、不安な事が。

元になるブラウスは袖なしに見えますが、ヨークから伸びた小さい袖があるのです。

身頃にフレアを入れているのでいろいろ操作して、ちょっと複雑な形をしています。

雰囲気を壊さないで、ヨークと袖部分を分離して新たに長袖をつけられるか。

(最初から普通にヨーク切り替えのものを製図し直そうかとも思いましたが、「似ていて全く違う物」になりそだったので辞めました。)

 

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🪡試着サンプル製作、送付🪡

 

なんとか、苦戦しながらも製図し、念のため、半身を組み立ててみて大丈夫だったので、試着サンプルを作って送りました。

 

ここで困ったことが。

試着したお母様から、「思っていたのと、違う感じ…」と戸惑いのお返事。

 

自分もお受けした時に「この袖だから、キュートな感じになるんだけど、長袖になると、どうかなぁ」と思ったのですが。

そうですよね。ちょっと子供のスモッグのように見えなくもない…。

 

 

🪡ご依頼者様チェンジ🪡

 

ここで、junoiさんは、気を使ってくださって、前の袖なしのブラウスをお母様に譲り、「私のブラウスを作ってください」とバトンタッチしてくださったのです。

 

🪡再び打ち合わせ→試着サンプル🪡

せっかくなので、刺繍生地は使うという事だけを残して、デザインは最初から考える事にしました。

 

この2枚、junoiさん提供の写真を加工させて頂きました。

ゆとり等の着心地やご希望をお聞きし、私自身もバランスを見ながら提案をして、製図を修正します。

 

また、大きなデザイン変更として、ピックアップされた刺繍が大柄な事、刺繍サイズに今回の前身頃の型紙が入り切る事から前身頃の切り替えをなくしました。

 

🪡製作🪡

 

前立て、表台衿、衿は前身頃の刺繍生地の余白部分を使うのは決まっています。

他のパーツの生地は、任せていただきました。

後身頃、ヨーク、袖の生地を決めます。

最初は、黒、紺、ボルドーを思って生地を見に行ったのですが、ゴールドに近い薄い茶、薄い水色も良い感じです。

junoiさんに似合う色。コーディネイトの事。着回ししやすさ…いろいろ考えると迷いました。

 

結局、持っていた光沢のある綺麗めのダンガリーにしました。

(写真左袖側が準備した薄い明るめの水色。左が採用のダンガリー)

 

縫製は通常のシャツの工程です。

 ※シャツとしては、袖山を身頃に付けてから袖下から脇を一気に縫うのが一般的ですが、今回は完成した袖を身頃に付ける順番にしています。

 

特徴のある、袖と脇についてのみ書きます。

 

肩のタックでボリュームを出して、ゴムで絞って袖口はフリルになるようなデザイン。

リボンは飾りです。

袖の写真(左:裏/右:表)

袖とフリル、それぞれを筒状に縫ってから合わせています。

袖とフリルを縫い合わる時、ゴム通しの別布(プリント生地)を一緒に縫っています。

縫い合わせの所でゴムを通せるよう口を開けています。

 

袖口のフリルなのですが、端の始末をロック始末後二つ折りにするか、三つ折りにするか迷いました。

試しに部分縫いをしてみて、柔らかい仕上がりのロック始末の方(写真左)にしました。

 

縫い代は、袖の縫い代を左右に割っているので、脇も左右に割っていますが、途中から巻くようにして、裾は三つ折りになっています。

前身頃をボトムに入れで、後ろ身頃を外に出す、という着方も出来るように、というご希望でしたので、脇のカーブを深く取りました。

裾、縫い合わせ部分に負担がかかるので、裏部分に裾マチ布を付けました。

これで丈夫になるはずです。

(写真を撮り忘れたので図で)

三角が鋭角なので、年寄りは思いの外苦戦しましたよ(笑)

 

 

🪡出来上り🪡

手洗いして、アイロンがけ、チェックしてからご依頼者様に発送。

スペアボタン、オマケと一緒に。

 

junoiさんが着画も送ってっ下さいました。加工してあります。

サイズぴったりで、お似合いだし、ホッとしました。うれしい。

そして、ちょうど、junoiさんがイベントに参加する時でした。

イベントで着てくださり、オマケのショルダーも使ってくださったそうです。

もう、泣いちゃいます。

ありがとうございます。

 

【課題】

私の製作依頼の受け方について、考えさせられる1件でした。

ご依頼者様の「こういう服を作って欲しい」という希望に添ったものを作っているので、「もっと丈を長く」「首周りのラインを変えて」「スカートのベルト、脇のみゴムから、全部ゴムにして」等の要望はありましたが、「違うから止めたい(キャンセル)」という事はありませんでした。

でも、「思ったものと全然違う」という事はあり得る、キャンセルはあり得る事です。

思い違いをなくすための試着サンプルですから、それが分って良かった、とも言えます。

 

ただ、そこに至るまでの労力(時間)や材料費、送料もかかっているので、赤字になります。

何件もあれば痛いですね。

 

今までも、「オリジナルデザインのブラウスを」というご依頼に、デザイン画を何枚も書き、色見本、刺繍の刺見本も作って、結局何も決まらず「もう少し、具体的に決まってからにしましょうか」となった事があります。

 

デザイン画や刺しゅう、試着サンプルまでて話が終わった場合、

それぞれの完成品自体に保険をかけて単価を高くする事はしたくありませんし…。

そこの部分をどうするか考えないと、と思いました。

 

※今回は、ジャンルは違ってもハンドメイド作家のjunoiさんが、キャンセルではなく、それまでにかかった経費、手間賃も含めて後を引き受けてくださいました。

有難い事です。

良い経験、考える機会になりました。

活かさないとだめですね。